来日中の移民難民研究の大家James Hollifield教授と昼食を挟んで懇談。
毎年、百万人単位で流れ込む不法移民難民への対応に苦慮する米国。過去2年でコロナ対策を理由に280万人を国境で追い返した。難民申請も受け付けない。明らかな難民条約のnon refoulement 原則の大規模の違反だ。 米国の難民政策が素晴らしいなどと持ち上げた日々は終わった。
トランプ政権が始めたその政策を批判してきたバイデン政権は、同政策を停止する一方で、5月から難民申請手続きを厳格化した。その結果、南部国境からの不法入国数は激減し混乱はひとまず収まっているという。
ただそれはバイデン政権の失政を責め立てて来年の大統領選を有利にしようと目論む共和党にとっては、争点がなくなるため面白くないのだそうだ。そこで共和党は今後は国内で難民申請中の200万人を問題としてバイデン攻撃を続けるという。移民難民問題が国政を左右する「政治化」の一例だ。
アメリカを目指す数100万人の移民難民は、治安や経済が崩壊している祖国から「生き残るため」に移動する。「プッシュファクター」だ。他方アメリカ国内では1200万人(一説では2500万人)の不法移民を含む4000万人の移民が「プルファクター」となる。加えてもともと移民から成り立つ国だから、外国人を不法入国・滞在だからといって無闇に追い返せない。アメリカの悩みは深く、社会は分断されている。
それに比べると、日本の移民難民問題の規模は小さい。難民認定を待つ申請者の数も7000人前後ではないか。彼らの出身国も、経済成長の続く東南アジア諸国が大半だ。先進国で移民難民問題が社会の分断にまでは至っていないのは日本ぐらいだ。日本人も外国人も秩序を守る慣行がそれを可能にしている。
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