この記事は日本から難民が大勢出ている、という誤解を呼ぶ。2007から2008年にUNHCR駐日代表をしていた頃、UNHCRの統計に日本人の難民が200人以上いるとされていて、ちょっと調べたことがある。
ここでの日本人難民は、日本国籍を持つ難民で、そのほとんどは中南米諸国にいる日系人だ。中南米諸国には数100万人の日系人がいると思われるが、中には日本国籍を放棄せずにいる者がいる。多くは二重国籍だろう。ペルーのフジモリ元大統領がその例だ。
中南米では政治的経済的混乱が何十年も続き、数十万人が(経済)難民として毎年逃げている。その中で、日系人が政治運動に関わったりして迫害されるとして逃れた場合、周辺国で難民と認定される可能性がある。その場合、日本国籍を主張すれば日本人の難民となる。
10年ぐらい前だったか、日本人のシングルマザーが、日本でシングルマザーという特定の社会的集団に属するという理由で迫害されるとして、オーストラリアで難民申請したが、最終的には不認定となった。
日本在住の日本人数十人が毎年、難民と認定されているというのはあり得ない。世界でもっとも安定していて政治的自由もある日本についての「出身国情報」を調べれば、ドイツの難民認定機関などが、日本は日本人が迫害される蓋然性が高い国だと判断することはない。
日本周辺の民主的な国/地域で難民が出ているのは、中国が政治的に締め付けを強化している香港だろう。香港の政治状況と日本の政治状況を比べて、どちらが波が出る国/地域かを考えてみよう。
UNHCRの統計は、各国政府の報告をそのまま使うから、その「正確性」は保証されない。国際比較も難しい。たとえば、アメリカでは10年以上在留する難民は市民権を得て難民でなくなるが、中国は40年以上前のベトナムとの戦争で逃げてきた中華系ベトナム人25万人を今も難民だと毎年報告している。難民統計は極めて政治性を帯びる。
今後、日本から出ていくのは「難民」ではなく「(高度)移民」だろう。それは毎年、数百人、数千人になるかもしれない。
このことについて大学院生などが調べると面白いかも。
Comments