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アメリカ出張日記(5)「世界開発報告2023」

20日には世界銀行の最も重要な年間報告"World Development Report (WRD)2023: Immigrants, Refugees, and Societies"の担当部長ザビエ氏と朝食ミーティング。WRDが移民難民を真正面から取り上げるのは初めてで、この問題の国際的重要性を示す。

僕から日本の最近の移民・難民政策の変更を聞いたザビエ氏が言うには、日本ができることは3つある。第1はPreparedness (途上国における難民の大量流出に備えた準備能力の向上)。日本は自然災害などに対する備えができている。それを、今後も起きるだろう難民の流出に活かすということ。例えばドバイやジブチでの支援物資の備蓄などが考えられる。

第2は難民に対する教育支援。例えばバングラデシュに滞留する100万人のロヒンギャ難民は十分な教育を受けておらず、「失われた世代」となりつつある。その中で日々積る不満は過激派の浸透を招き、ロヒンギャ問題が「第2のパレスチナ問題」となる可能性は十分ある。それを防ぐために日本は教育支援をすることができる。なにより教育支援は日本人が好むところだ。

第3が一番面白い。難民に語学・技術教育の機会を与え、一定の水準に達した者を日本が労働者として受け入れるというもの。誰でも受け入れるのではなく、条件を課す。ここに一種の規律を儲けるのは、規律なく流れ込む移民難民で混乱する欧米諸国で反移民難民の動きが強まっていることを考慮したものだろう。

これは僕がいうところの「規律ある人道主義」と重なる。特定技能制度によって数十万人の外国人労働者(移民)を受け入れることにしている日本にとって採用しやすい政策だ。国連難民高等弁務官のグランディも最近同趣旨の提言をしている。難民も当然ながら働いて貢献できるし、そうしたいと思っている。この提案は実されるなら多少とも人材不足に苦しむ日本を助けることになる。外国人労働者受け入れが加速する一方で、難民受入数の拡大が求められている日本にとって一石二鳥、合理的な政策だ。ただし、どのくらいの難民がその「条件」をクリアして日本に来たがるかは全くわからない。「条件」の設定次第で変わるだろうが、年に数十人、せいぜい数百人かも。それでも新しい受け入れの形ができるなら素晴らしい。

これらの提案は思い付きではない。世銀の調査・政策形成能力を動員してのWRDから出てきたものだ。難民条約による国際保護が機能しなくなった今日、「労働経済学」の視点を入れたザビエ氏の提言は真剣に検討するに値する。

 
 
 

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